
40代から先に減っていくのは、脂肪より筋肉。
そう言われたら、意外に感じませんか?
体重は増えていないのに、体のラインだけがもったりしてきた。
二の腕や下腹のあたりが、気づけばゆるくなっている。
「脂肪が増えたせいだ」と思い込んでいる人、実はかなり多いんです。
でも、その正体の一部は、脂肪ではなく筋肉の低下かもしれません。
加齢によって骨格筋量や筋力が落ちていく状態のことを「サルコペニア」と呼びます(注1)。
もともとは高齢期の問題として語られてきた言葉ですが、この低下が始まるのは実はもっと早く、40代の時点でもう進行中なんですよね。
この記事では、サルコペニアの基礎知識から、自分の筋肉量が減っていないかのセルフチェック、そして最低限必要な筋トレ量の目安まで、元パーソナルトレーナーの立場で解説していきます。
サルコペニアとは|40代はもう「進行中」の段階
先に言ってしまうと、サルコペニアとは加齢に伴って骨格筋量と筋力、または身体機能が低下する状態のことです(注1)。
厚生労働省の「e-ヘルスネット」によると、骨格筋量の低下は25〜30歳頃から始まり、生涯を通して進行するとされています(注1)。
つまり40代は、もう「低下中」のただ中にいるということ。
何か特別な出来事があったわけではなく、ただ生きているだけで、筋肉は少しずつ減っていくものなんです。
健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)の情報では、20歳頃の筋肉量を基準にすると、70歳頃には男女ともにおよそ30%低下し、10年あたりではおよそ6%ずつ減っていくとされています(注2)。
数字で見ると、結構じわじわきますよね。
ただ、ここで一つお伝えしたいのは、「原因不明の体の変化」ではなく「加齢による自然な現象」だと分かれば、少し気が楽になるということです。
停滞期や体型の変化を、気合いや根性の問題だと自分を責めてしまう人をたくさん見てきましたが、まず知ってほしいのは、これは誰にでも起こる変化だということ。
原因が分かれば、自分を責めなくて済みます。

脂肪より筋肉が先に減るとどうなるか
筋肉が脂肪より先に減っていくと、体にはいくつかの変化が起こります。
- 基礎代謝が下がり、同じ食事量・運動量でも脂肪がつきやすくなる(注3)
- 姿勢を支える筋肉(体幹・下半身)が減ることで疲れやすくなり、活動量そのものが落ちていく
- 活動量が落ちることで、さらに筋肉が減るという悪循環に入りやすくなる
- 大腿四頭筋のように、80歳代の筋肉量が30歳代の半分程度まで落ちるとされる筋肉もある(注4)
厚生労働省の「e-ヘルスネット」では、加齢に伴って基礎代謝量が低下する主な理由の一つに、筋肉などの除脂肪量の低下が挙げられています(注3)。
以前の記事「40代からお腹だけ太る本当の理由」でも触れましたが、40代でお腹周りだけ脂肪がつきやすくなる背景には、こうした筋肉量の低下による代謝の変化も関係しています。

「食べる量は変えていないのに、なぜかお腹だけぽっこりしてきた」。
その感覚、気のせいじゃなかったんです。
停滞期だと思って焦っていたものが、実は筋肉が減って代謝も一緒に下がっていただけ、ということもある。
我慢が足りないわけじゃないと分かるだけで、ちょっと肩の力が抜けませんか?
自分の筋肉量が減っているかのセルフチェック
筋肉量の低下は、体重の変化よりも先に、こんなところに現れやすいです。
- 椅子から手を使わずにスッと立ち上がれない(椅子からの立ち上がりの速さは、医療・介護の現場でも身体機能の評価方法の一つとして使われています(注5))
- 階段を上ると、以前より息切れしやすい
- 片足立ちで靴下やストッキングを履くとき、ふらつきやすくなった
- 体重はさほど変わっていないのに、二の腕や下腹、太ももの「張り」が変わってきた
一つでも当てはまったからといって、焦ってジムに駆け込む必要はありません。
まずは「動かす」意識を持つだけで、十分なスタートになります。
実際にあったお客様のエピソードを紹介します。
50代後半の女性で、デスクワーク中心、食事量も少なく、若い頃からずっと細い体型を保ってきた方でした。
細いことが、その方にとってはちょっとした誇りだったそうです。
ただ50代後半になって、疲れやすく体が思うように動かなくなり、体力をつけたいとトレーニングにいらっしゃいました。
実際に見てみると、スクワットを1〜2回行うのもやっとというレベルまで筋力が落ちていて、正直私も驚きました。
体組成計で測定したところ、すべての部位の筋肉量が標準を下回っている状態でした。
「細い自分」が長年のアイデンティティだった方だけに、この結果はかなりショックだったようです。
最初はなかなか現実を受け入れられない様子でしたが、サルコペニアを放っておいた場合のリスクや、10年後にどうなるかをお伝えしたところ、体重を少し増やしてでも筋力をつけていく方針に納得していただけました。
食事量、特にたんぱく質量を見直しながら、少しずつ筋肉をつけていく取り組みを始めていただきましたが、正直なところ、効果が見えてくるまでに2〜3年かかりました。
これは筋力低下の度合いが大きかったこの方のケースで、かかる期間には個人差があります。
ただ、筋肉はそれくらい腰を据えて向き合うものだと考えておいた方が、気持ちの面でも楽なはずです。
逆に言えば、サルコペニアは予防であれば十分間に合います。
苦労してから取り戻すより、気づいた今のうちに予防を始める方が、ずっと負担が少ないはずです。
最低限必要な筋トレ量の目安
ここからは、最低限どれくらい筋トレをすればいいのか、という話です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の情報シートでは、成人および高齢者に対して、筋力トレーニングを週2〜3日実施することが推奨されています(注6)。
e-ヘルスネットのレジスタンス運動の項目でも、同様に週2〜3回程度の頻度が勧められています(注7)。
毎日やる必要はない。
むしろ、筋肉を休ませる日を挟みながら取り組むのが基本です。
個人的には、「筋トレは毎日やらないと意味がない」と思い込んでいる人ほど、途中で挫折しやすいと感じています。
鍛える部位にも優先順位があります。
大腿四頭筋(太もも前面)や大臀筋(お尻)、腹筋群・背筋群といった、体の中でも大きな筋肉群から取り組むのが効率的です。
これらはいずれも、立つ・歩く・姿勢を保つといった日常動作そのものを支えている部分でもあります。
のべ300人以上の40代以上の女性と向き合ってきた中で感じるのは、「頑張りすぎた人ほど続かない」ということ。
最低限の目安を知っておくだけで、ハードルがぐっと下がります。
部位ごとの優先順位については、以前の記事「40代の筋トレは何から始める?初心者向け優先順位ガイド」で詳しく解説しています。

頻度や休養の考え方をもう少し詳しく知りたい方は、「40代女性の筋トレ、結局週に何回がベスト?頻度と休養の考え方を元トレーナーが解説」もあわせて読んでみてください。


自宅でできる最低限の筋トレの始め方
器具は、正直なくても大丈夫です。
最低限、これだけ押さえておけば十分というチェックリストを置いておきます。
- 椅子スクワットを週2〜3回、1セット5〜10回から始める
- 壁に手をついて行うプランク(30秒程度)を取り入れる
- かかとの上げ下げ(ふくらはぎの運動)を、歯磨き中など生活動作に紐づける
- エレベーターより階段を選ぶ回数を、まず週1回増やす
いきなり毎日・何十回を目指す必要はありません。
「これくらいならできそう」というラインまで、ハードルを下げてしまうのがコツです。
筋トレと合わせて、自宅での有酸素運動も無理なく続けたいという方は、以前の記事「【実機レビュー】FOUSAEルームランナーを40代が使って分かった、自宅有酸素運動を続けるコツ」も参考にしてみてください。
まとめ|筋肉を守ることが、40代ダイエットの土台になる
脂肪を減らすことより先に、筋肉を守ること。
40代ダイエットの土台は、ここにあると思っています。
サルコペニアは、特別な病気というより、誰にでも静かに進んでいく自然な変化です。
だからこそ、気づいたタイミングで、最低限の筋トレ量だけでも押さえておく。
それだけで、この先の体の変わり方は、きっと違ってきます。
筋肉の話は、更年期のホルモン変化とあわせて語ると、もっと全体像が見えてきます。
以前の記事「40代から太りやすくなる本当の理由|更年期ホルモンの全体像を元トレーナーが解説」でまとめているので、まだの方はこちらもどうぞ。

使用した外部ソース
- (注1) サルコペニア|e-ヘルスネット(厚生労働省)(2026年10月15日閲覧)
- (注2) 運動機能の老化|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)(2026年10月15日閲覧)
- (注3) 加齢とエネルギー代謝|e-ヘルスネット(厚生労働省)(2026年10月15日閲覧)
- (注4) QOLの維持・向上に大切な筋肉は?|e-ヘルスネット(厚生労働省)(2026年10月15日閲覧)
- (注5) サルコペニアの診断|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)(2026年10月15日閲覧)
- (注6) 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて|e-ヘルスネット(厚生労働省)(2026年10月15日閲覧)
- (注7) レジスタンス運動|e-ヘルスネット(厚生労働省)(2026年10月15日閲覧)
