はじめに——何度も挫折してきたのは、あなたの意志が弱いからじゃない
「今度こそ」と決意して始めたはずのダイエットが、気づけばまた続かなくなっている——そんな経験を繰り返してきた方は、少なくないのではないでしょうか。
パーソナルトレーナーとして指導をしていた頃、真面目で頑張り屋なのに、なぜか結果につながらず空回りしてしまう受講者様を何人も見てきました。そのたびに、「せっかくこんなに頑張れる人なのに、もったいないな」と感じていたのを覚えています。
日本人には、真面目で頑張り屋な方が多いように思います。それ自体はとても素晴らしい性質ですが、実はその真面目さゆえに、ダイエットでは空回りしやすくなってしまうケースが多いのではないか——指導をする中で、そう感じることが何度もありました。
加えて、今の時代はSNSの影響もあって、見た目に対するプレッシャー(ルッキズム)が強くなっているように感じられます。「痩せたい」「きれいになりたい」という気持ちが、いつのまにか「痩せなければいけない」という強迫観念のようなものに変わってしまっている方も少なくないように感じます。
この記事では、指導の中で見えてきた「挫折しやすい人に共通する特徴」と、そこから抜け出すための考え方をご紹介します。読んでくださった方の気持ちが少しでも軽くなり、正しい知識をもとに、頑張りが空回りせずにきちんと結果へつながるようになれば——そんな思いで書きました。
ダイエットが続かない人に共通する4つの特徴
指導をしてきた中で、途中で挫折してしまった受講者様には、いくつかの共通する特徴がありました。ここでは代表的な4つをご紹介します。
特徴1 アドバイスを素直に受け止められない(頑固)
以前、極端に低いカロリーの食事制限で大きく体重を落としたものの、その後リバウンドしてしまい、あらためて指導を受けにいらっしゃった方がいました。
その方の状態やこれまでのダイエット歴を踏まえ、リバウンドを防ぎながら健康や基礎代謝を維持し、仕事や子育てに必要なエネルギーも確保できるよう、無理のない食事量を提案しました。
しかし、その方はご自身の中にある「以前のやり方で結果が出た」という過去の成功体験が強く残っていたようで、なかなか提案通りに食事量を増やすことができませんでした。体重が思うように減らないことへの焦りから、感情的な言葉を投げかけられたこともあります。
理由やメリットを丁寧に説明しても、これまでのやり方に固執してしまい、素直に指導を受け入れていただくことが難しいケースでした。
特徴2 うまくいかない理由を周りのせいにしてしまう(他責思考)
先ほどと同じ方のエピソードになりますが、この方にはもうひとつ共通した傾向がありました。結果が思うように出ないとき、その理由を自分の取り組み方ではなく、周囲や指導内容のせいにしてしまう、という点です。
「前はもっと痩せられたのに」「言われた通りにしているのに全然変わらない」というお気持ちは、決して珍しいものではありません。ただ、このケースでは、実際にはご自身のペースで指導内容から少しずつ離れてしまっていたにもかかわらず、結果が出ない理由を外側に求めてしまい、最終的には指導が続かず離脱という形になってしまいました。
うまくいかない理由がすべて自分にあるわけではありませんが、「まず自分の取り組み方を振り返ってみる」という視点を持てるかどうかは、続けられるかどうかを大きく左右するように感じます。
特徴3 「痩せること」自体がゴールになっている
40〜50代のある受講者様の例です。身長に対する体重は標準的な範囲にあり、特に痩せる必要がある状態ではありませんでした。「数kg痩せたい」というご希望で入会されたのですが、詳しくお話をうかがっていくと、SNSで見かける自分より若い世代の方の体重と、ご自身の体重を比べて「自分は太っている」と感じてしまっていることがわかりました。
体組成としては健康的で良い状態だったにもかかわらず、「この体重でなければいけない」というひとつの数字への強いこだわりから、ご自身を必要以上に追い込んでしまっていたのです。
「痩せること」は本来、健康や心地よさを手に入れるための手段のはずですが、その数字自体が目的化してしまうと、達成してもしなくても満たされない状態が続いてしまいます。
特徴4 結果をすぐに求めてしまう
数ヶ月という短期間で5kg、10kgといった大きな変化を求める方も、挫折しやすい傾向がありました。体への負担が少ない範囲でのダイエットでは、そもそも短期間で大きく体重が落ちること自体が不自然であり、無理な方法をとっているか、何か特殊な事情があるケースがほとんどです。こうした理屈を、理論としてきちんとお伝えするようにしていました。
そのうえで、体重計の数字ばかりを追いかけてしまわないよう、意識的に別のところへ目を向けてもらう声かけも大切にしていました。たとえば、好きな趣味に打ち込む時間を作ってもらったり、目標にしている服をあえて先に買って毎日着てもらい、そのゆるさやきつさの変化で体の変化を感じてもらったり——体重以外の指標を持つことで、数字に振り回されすぎない工夫をお伝えしていました。

挫折しやすい人が陥りがちな3つの「もったいない」失敗
ここまでご紹介した特徴と重なる部分もありますが、指導の中で「もったいないな」と感じた失敗パターンを、あらためて3つに整理してご紹介します。
失敗1 過去の成功体験にすがってしまう
先ほどご紹介した、極端な食事制限からリバウンドしてしまった方のエピソードは、実はこの「過去の成功体験への固執」を象徴するケースでもあります。
以前うまくいったやり方には、当然ながら強い成功体験としての記憶が残ります。ですが、そのときの体重・年齢・生活リズムと、今の状態はまったく同じではありません。過去に結果が出たからといって、今の自分にも同じやり方が合うとは限らないのです。
だからこそ、初回のカウンセリングでは、これまでのダイエット経験を必ず確認するようにしていました。過去の経験は大切な情報として活かしつつも、「今の自分に必要なやり方」として新しく提案された内容を、いったん素直に受け止められるかどうかが、結果を左右する大きな分かれ目になります。
失敗2 頑張りすぎてしまう
これは意外に思われるかもしれませんが、指導してきた実感として、頑張りすぎる方よりも、ある程度「適当」な心構えの方のほうが、結果が出やすい傾向がありました。
頑張りすぎる方は、たとえば運動ができなかった日に「今日運動できなかった自分はダメだ」と自分を責めてしまいがちです。こうした強いストレスは、コルチゾールというストレスホルモンの分泌につながることが知られています(出典:労働安全衛生総合研究所「ストレスホルモンを測る」)。指導をしてきた実感としても、ストレスを抱えている時期ほど、かえって痩せにくくなると感じることが多くありました。
一方で、「今日は休めたからよかった」とプラスに受け止められる方は、たとえば「寝る前に腹筋を3回だけやった、それだけでも自分を褒めよう」というくらいの気楽さで、無理なく続けられていました。
ストレスは、食欲という形で解消されてしまうことも少なくありません。だからこそ、自分に厳しくなりすぎず、ときには自分に甘く、適当なくらいの心構えでダイエットに取り組む方のほうが、結果的にはうまくいくケースが多かったように感じます。
失敗3 ネットで情報を集めすぎてしまう
ネット上には、正しい情報もあれば、誤った情報もあります。ただ、ここで注意したいのは、たとえ正しい情報であっても、「それが今の自分に合うかどうか」はまったく別の問題だという点です。
自分に合わない情報に心を乱され、あれこれと手を出してしまうと、かえって良い結果につながらないことが多くありました。もしトレーナーなど、自分の状態を把握してくれている専門家がついている場合は、まずはその方の言葉を優先することをおすすめします。トレーナーは、体重や身長だけでなく、ライフスタイルや性格、トレーニングの様子、食事内容まで含めて総合的に見たうえでアドバイスをしているからです。
ネットで気になる情報を見つけたときは、自己判断ですぐに取り入れるのではなく、「これって私にも合いますか?」と一度トレーナーに確認してみる習慣を持つことをおすすめしていました。

なぜ「頑張れる人」ほど挫折しやすいのか
ここまでご紹介してきた特徴や失敗パターンには、実はひとつの共通点があります。それは、どれも「一人で頑張りすぎてしまっている」ということです。
過去のやり方に固執してしまうのも、「痩せること」自体が目的になってしまうのも、結果を急いでしまうのも、そして頑張りすぎてしまったりネットの情報を集めすぎてしまったりするのも、根っこには「自分一人でなんとかしなければ」という真面目さがあります。
つまり、これらは意志が弱いから起きることではなく、真面目で頑張り屋な方ほど陥りやすい、いわば「パターン」なのです。もしここまで読んで、思い当たる節があったとしても、それは決して「あなたの意志が弱いから」ではありません。誰にでも起こりうる、繰り返しやすい傾向があるというだけのことです。
同じ失敗を繰り返さないために——一人で抱え込まないという選択肢
こうしたパターンから抜け出すために、私が指導の現場でお伝えしていたのは、「一人で抱え込まず、誰かと一緒に取り組む」という選択肢です。
誰かに伴走してもらいながら取り組むことは、それ自体がストレスの解消につながることも多いです。また、知識のある伴走者がそばにいれば、もし違う方向に進んでしまっていても、早い段階で軌道修正できます。一人で試行錯誤を重ねるよりも、結果的に時間の効率がよくなることも多いのです。
実際に指導していた中で、こんな受講者様がいらっしゃいました。糖質の代謝があまり得意ではないタイプだったのですが、ご本人はそれまでずっと、摂取カロリー全体を削る努力を続けていました。ところが、ご自身の体質タイプを知るきっかけがあったことで、はじめてそのことに気づかれたのです。そこで方針を見直し、糖質を中心に控えめにしつつ、脂質はやや多めに摂る内容へと食事指導を切り替えたところ、それまでよりも順調に体重が落ちていきました。
自分に合ったやり方は、自己流の試行錯誤だけではなかなか見つからないこともあります。信頼できる誰かと一緒に取り組むという選択肢を、ぜひ一度検討してみてください。
専門家の伴走を検討してみたい方は、契約前に確認しておきたいポイントをこちらにまとめています。

まとめ
ダイエットが続かないのは、決して「意志が弱いから」ではありません。頑固さ、他責思考、痩せること自体の目的化、結果を急ぎすぎる姿勢——これらはどれも、真面目に頑張ってきた方だからこそ陥りやすい「パターン」です。
大切なのは、自分を責めることではなく、「自分にはどの傾向があるか」を知ることです。自分の傾向がわかれば、同じ失敗を繰り返さないための工夫もできますし、一人で抱え込まずに誰かと一緒に取り組むという選択肢を持つこともできます。
今日から少しずつ、自分の頑張りがきちんと結果につながるダイエットへと、一歩ずつ近づいていってもらえたらうれしく思います。
