ネットの情報、結局どれが正しいの?
「これって本当に効果があるの?」「あの情報とこの情報、言っていることが違う気がする……」
ダイエットについて調べ始めると、こんなふうに感じたことがある方は多いのではないでしょうか。栄養素の解説記事、専門家の監修記事、SNSでの口コミ——情報はいくらでも見つかるのに、どれを信じればいいのか分からず、かえって不安になってしまう。40代以降になると、若い頃と同じやり方が通用しにくくなったと感じることも増え、「今度こそ正しい方法で」と情報収集に力が入る分、その混乱もより大きくなりやすいように思います。
たんぱく質や糖質、脂質といった栄養素そのものを解説する記事は、ネット上にすでにたくさんあります。この記事では、そうした一般的な栄養解説ではなく、パーソナルトレーナーとして指導の現場に立っていたときに、受講者様が実際に「本気で信じ込んでいた」思い込みを取り上げます。教科書的な知識ではなく、現場で実際に見聞きしたリアルな誤解だからこそ、「あ、それ自分も思っていたかも」と感じていただけるところがあるかもしれません。
実際に、指導を始めたばかりの頃に出会った、ある受講者様のことが今でも印象に残っています。それまでにさまざまなダイエット情報を自分なりに集めて、真剣に取り組んでこられた方でした。初回のカウンセリングで普段の食事内容をうかがうと、「朝はバナナが良いと聞いたのでバナナを食べています」「MCTオイルが痩せると聞いたので摂っています」といった答えが次々と返ってきて、その量をうかがうと、推奨されている量をかなり上回っていることも少なくありませんでした。良さそうな情報を積極的に取り入れようとする行動力はすばらしい一方で、「自分にとって何が必要で、何が必要ないか」を選び取ることが難しくなってしまっている様子がうかがえました。情報を集めれば集めるほど、かえって何を信じればいいのか分からなくなり、追い詰められたような表情をされていたのが、強く印象に残っています。
元トレーナーが現場で驚いた「本気で信じられていた」思い込み4選
指導をする中で出会った受講者様の中には、ダイエットに関する情報を、ご本人なりに一生懸命集めて実践されている方がたくさんいらっしゃいました。ただ、その中には「え、そう思っていたんですか」と驚いてしまうような思い込みも少なくありませんでした。ここでは、特に印象に残っている4つの思い込みをご紹介します。
- ①「プロテインを飲むと太る。筋トレしていないなら飲んではいけない」
- ②「グラノーラはダイエット食品」
- ③「汗をたくさんかけば痩せる」
- ④「脂肪が筋肉に変わる」

一つずつ、なぜそう思われがちなのか、実際のところはどうなのかを見ていきます。
思い込み①「プロテインを飲むと太る。筋トレしていないなら飲んではいけない」
「プロテインは筋トレをしている人が飲むものだから、自分が飲むと太ってしまうのでは」——こうした不安を口にされる受講者様は、決して少なくありませんでした。
プロテイン(英語のprotein)は、日本語では「たんぱく質」を意味する言葉です。日本では、たんぱく質を主成分とした粉末状の栄養補助食品を指して「プロテイン」と呼ぶことが多いですが、もともとは特別なものではなく、たんぱく質そのものを指す言葉になります。たんぱく質は、炭水化物・脂質と並ぶエネルギー産生栄養素のひとつであり、筋肉だけでなく、臓器や皮膚、髪などの体をつくる材料としても使われる栄養素です(出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「たんぱく質」、2026年8月24日閲覧)。
もちろん、たんぱく質を含め、どんな栄養素であっても、1日の食事全体でとるエネルギー量が消費量を上回れば、体重が増える方向に働く可能性はあります。その意味で、プロテインだけが特別というわけではありません。ただ、「プロテインを飲むこと自体」が、筋トレの有無に関わらず直接的に太る原因になるというわけではなく、あくまで栄養補給の選択肢のひとつという位置づけになります。持病がある方やたんぱく質の摂取量に不安がある方は、自己判断だけで進めず、医師や管理栄養士に相談されることをおすすめします。
実際に、明らかに食事からのたんぱく質摂取量が不足している受講者様に、プロテインを取り入れることをご提案したところ、驚かれてしまったことがあります。その方は、プロテインは筋トレをがっつり行うような、体格の大きい男性が飲むものというイメージを強くお持ちで、「飲んだら筋肉がついて体つきがゴツくなってしまうのでは」と、かなりの不安を感じていらっしゃいました。飲むだけでそれほど筋肉がついてしまうのであれば、誰も苦労しないという話をすると、とても驚かれていたのが印象的でした。
プロテインにはホエイ・ソイ・カゼイン・美容系など複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。「結局どれを選べばいいの?」という方は、以前の記事「ホエイ・ソイ・カゼイン・美容プロテイン徹底比較」もあわせてご覧ください。

思い込み②「グラノーラはダイエット食品」
「グラノーラは体にいいから」と、毎朝の朝食に取り入れている受講者様も多くいらっしゃいました。オーツ麦やドライフルーツ、ナッツといった素材の印象から、なんとなく「ヘルシー」「ダイエット向き」というイメージを持たれやすい食品です。
ただ、グラノーラは商品によって、糖質量や脂質量にかなりの差があります。パッケージのデザインやキャッチコピーの「ヘルシーさ」だけで判断してしまうと、実際にはカロリーや糖質・脂質が想像より多い商品を選んでしまっていることもあります。加工食品には栄養成分表示が義務づけられており、熱量やたんぱく質・脂質・炭水化物などの量を確認することができます(出典:消費者庁「栄養成分表示について」、2026年8月24日閲覧)。「ヘルシーそう」というイメージだけで選ぶのではなく、パッケージ裏面の栄養成分表示を一度確認してみる習慣が、思い込みによる遠回りを防ぐ助けになります。
毎朝グラノーラをたっぷりの牛乳と一緒に召し上がっていた受講者様がいらっしゃいました。パンやヨーグルトなども合わせて召し上がっていたため、朝食全体のカロリーとしてはかなり高くなっている状態でした。グラノーラ自体は栄養バランスの良い食品ですが、決して低カロリーというわけではないこと、糖質もそれなりに含まれていること、そこにたっぷりの牛乳を加えるとカロリーオーバーになりやすいことをお伝えすると、「ダイエット食品だと思ってずっと食べていたのに」と、驚かれていました。
思い込み③「汗をたくさんかけば痩せる」
サウナスーツを着て運動したり、あえて厚着をしてトレーニングしたりと、「とにかく汗をかくこと」にこだわる受講者様もいらっしゃいました。汗だくになった後は体重計の数字が減っていることも多く、「これだけ痩せた」という実感を持ちやすいのも事実です。
ただ、汗は主に体温調節のためにかくものです。体温が上がると、汗をかくことなどを通じて、体にたまった熱が外へ逃げていく仕組みになっています(出典:環境省熱中症予防情報サイト「熱中症の予防方法と対処方法」、2026年8月24日閲覧)。汗によって一時的に減る体重は、その大部分が体内の水分によるものと考えられ、水分を補給すれば元に戻っていきます。つまり、汗の量そのものが、体脂肪が減った量と直接イコールになるわけではありません。
「汗をかく=運動をがんばった実感」につながりやすいからこそ、汗の量を目的にしてしまいたくなる気持ちは自然なことのように思います。ただ、体脂肪を減らすことを目的にする場合は、汗の量ではなく、運動の内容や継続できているかどうかに目を向けることが大切です。
ウォーキングやトレーニングの際に、常にサウナスーツを着用されている受講者様がいらっしゃいました。岩盤浴やサウナにも積極的に通われており、「とにかく汗をかけば痩せられる」と考えていらっしゃったようです。汗をかいた後に体重が減っていても、それは体から水分が抜けているだけで、水分を補給すればまた戻ってしまうこと、汗の量と体脂肪が減る量はイコールではないことをお伝えしました。あわせて、サウナスーツは体温調節がうまくいかずに体調を崩しやすいこと、汗が蒸発しにくく不快感につながりやすいことから、ダイエット目的での常用はおすすめしていない、ともお伝えしています。
思い込み④「脂肪が筋肉に変わる」
「筋トレを頑張れば、お腹の脂肪が筋肉に変わってくれますよね」——そう信じて、特定の部位のトレーニングに熱心に取り組まれる受講者様もいらっしゃいました。
脂肪組織と筋組織は、構成する細胞の種類も働きも異なる別々の組織です。運動によって体脂肪が減り、同時に筋肉が発達することはありますが、脂肪細胞そのものが筋肉の細胞に置き換わっているわけではない、というのが一般的な理解です。
このイメージが広まりやすい背景には、トレーニングを続けた結果として、その部位の脂肪が減って引き締まり、同時に筋肉がついて輪郭がはっきりしてくることで、見た目の変化がまるで「脂肪が筋肉に変わった」かのように感じられやすい、という点があるのではないかと考えています。実際には、脂肪が「減る」ことと筋肉が「つく」ことは、別々に起きている変化です。
実際に、特別なトレーニングをしていたわけではないのに、「脂肪が全部筋肉に変わってしまったら、体が大きいままになりませんか」と真剣に心配される受講者様がいらっしゃいました。脂肪がそのまま姿を変えて筋肉になるわけではないこと、順番としては、まず脂肪を減らし、その後で筋肉をつけていくという考え方をお伝えしたのですが、「運動をしている脂肪が、そのまま筋肉に変わっていくのだろう」というイメージを強くお持ちだったため、正しい理解に戻していただくのに、少し時間がかかったことを覚えています。
思い込みが生まれやすいのはなぜ?
ここまで紹介した4つの思い込みには、共通する傾向があるように感じます。
一つは、断片的な情報だけが独り歩きしてしまいやすいということです。「プロテイン=筋トレしている人向け」「グラノーラ=ヘルシー」「汗=痩せた証拠」「脂肪=筋肉に変わる」といったイメージは、いずれも短い言葉やビジュアルだけで伝わりやすく、SNSや口コミを通じて広まりやすい性質を持っています。
もう一つは、イメージが先行してしまいやすいということです。パッケージの見た目や、汗をかいた後の爽快感、トレーニング後の引き締まった感覚など、実際の体感やビジュアルが強い印象を残すため、その裏側にある体の仕組みまではなかなか意識が向きにくいのだと思います。
こうして見ていくと、これらは「情報そのものが間違っている」というより、「本来伝えるべき背景の説明が省略された状態で伝わっている」ケースが多いように感じます。プロテインも、グラノーラも、汗をかくことも、トレーニングも、それぞれ間違ったものではありません。ただ、その仕組みや背景まで理解しないまま、印象だけで判断してしまうと、思い込みにつながりやすいのだと思います。
指導をしていて感じたのは、誤った情報を信じ込んでしまいやすい方には、SNSの影響が大きく表れているということです。特に、お気に入りのインフルエンサーがいる場合、その方が発信する情報を疑わずに信じてしまう傾向が強く見られました。インフルエンサーの発信の中には、事実に基づいた情報もありますが、商品のPRやフォロワーを増やす目的で、実際よりもセンセーショナルに、大げさに伝えられているケースも少なくありません。以前はテレビの情報が信じられやすい傾向にありましたが、今はその対象がSNSに移ってきているように感じます。ダイエットの方法には向き不向きがあり、誰か一人に合った方法がすべての人に当てはまるわけではないからこそ、SNSで情報を受け取ったときは、一度立ち止まって「本当だろうか」と考えてみる習慣を持つことをおすすめします。
情報を見極めるための3つの視点
ダイエットに関する情報を目にしたとき、思い込みに振り回されないために意識しておきたい視点を3つ整理しました。
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断定的な表現に注意する 「これだけで痩せる」「絶対に太らない」といった言い切りの表現には注意が必要です。体の状態や生活習慣は人によって異なるため、多くの場合に当てはまりやすい傾向はあっても、誰にでも同じように当てはまる断定はできません。
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出典・情報源を確認する習慣を持つ その情報が、公的機関や学術的な根拠に基づいているのか、それとも個人の感想や体験談なのかを意識してみることが大切です。情報源がはっきりしないものは、鵜呑みにせず「参考のひとつ」として受け止める姿勢が安心につながります。
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体の仕組みレベルで理解する 「なぜそう言えるのか」という理由の部分まで理解しようとすることで、印象やイメージだけに左右されにくくなります。仕組みが分かっていれば、新しい情報に出会ったときも、自分なりに判断しやすくなります。

まとめ

今回は、指導の現場で実際によく見られた4つの思い込みをご紹介しました。
- プロテインを飲むこと自体が、直接太る原因になるわけではない
- グラノーラは商品によって糖質・脂質量に差があり、「ヘルシーそう」というイメージだけで選ぶのはリスクがある
- 汗をかく量は、体脂肪が減った量と直接イコールではない
- 脂肪組織と筋組織は別の組織であり、脂肪がそのまま筋肉に変わるわけではない、というのが一般的な理解です
どの思い込みも、根っこには「イメージ先行で、背景の説明が省略されて伝わってしまう」という共通点がありました。ネット上の情報がすべて間違っているわけではありませんが、その情報が「なぜそう言えるのか」「自分の体や生活に合っているのか」まで確認する姿勢を持つことが、遠回りを防ぐ第一歩になるのではないかと思います。
情報の正しさそのものよりも、「自分の体に合っているかどうか」を確認しながら向き合っていく——そんな視点を、これからのダイエットに役立てていただけたらうれしく思います。
使用した外部ソースの一覧
- e-ヘルスネット(厚生労働省)「たんぱく質」(2026年8月24日閲覧)
- 消費者庁「栄養成分表示について」(2026年8月24日閲覧)
- 環境省熱中症予防情報サイト「熱中症の予防方法と対処方法」(2026年8月24日閲覧)
