はじめに
「よし、今度こそ頑張ろう」——そう決意したはずなのに、気づけば数日で行動が止まってしまう。あるいは、順調に体重が減っていたのに、ある時期からぴたりと数字が動かなくなり、心が折れそうになる。
そんな経験、ありませんか。
以前の記事「ダイエットが続かないのは『意志が弱い』せいじゃない?挫折する人に共通する4つの特徴」では、頑固さや他責思考、結果を急ぎすぎる姿勢など、挫折しやすい方に共通する「性格・考え方の傾向」についてお話ししました。

今回は少し切り口を変えて、「日々の行動をどう仕組み化するか」「体重が動かない停滞期に、自分自身にどう声をかけるか」という、より実践的なテクニックに絞ってお伝えしていきます。性格や意志の強さとは関係なく、誰でも今日から取り入れられる工夫ばかりです。
指導をしていて感じたのは、途中でつまずいてしまう受講者様の多くが、思うように結果が出ないことに焦り、それまで続けていた運動をやめてしまったり、食事の管理を緩めてしまったりする、という共通点があるということでした。停滞期を乗り越える一番のコツは、実はシンプルに「それまでやってきたことを変えずに淡々と続けること」なのですが、つまずいてしまう方の多くは、逆にいつもと違うことをしてしまいがちなのです。
1. 「続かない」のは意志が弱いからじゃない、仕組みがないだけ
ダイエットが続かない理由を、多くの方が「自分の意志が弱いから」だと考えてしまいがちです。ですが、指導をしてきた実感として、続けられるかどうかを分けているのは、意志の強さそのものよりも「仕組みがあるかどうか」だと感じることが多くありました。
気合いや根性、「絶対にやるぞ」という意気込みだけで行動を続けようとすると、忙しい日が続いたり、疲れがたまったりしたタイミングで、あっけなく崩れてしまうことがあります。指導の実感としても、新しい習慣を続けられるかどうかは、行動を始めるための「ハードル」をいかに下げておけるかに大きく左右されると感じてきました。
つまり、「毎日必ずジムに行く」「絶対に間食しない」といった、意志の力に頼る目標の立て方は、続かなくても不思議ではないのです。大切なのは、意志の力を消耗せずに済むよう、あらかじめ行動しやすい仕組みを作っておくこと。次の章から、その具体的な方法をご紹介していきます。
2. すでにある習慣に運動を「くっつける」ながら運動術

行動を仕組み化する方法のひとつが、すでに毎日やっている習慣に、新しい運動を「くっつける」というやり方です。
トイレや歯磨きのたびにスクワット5回だけ
たとえば、トイレに入ったら必ずスクワットを5回だけ行う、歯磨きをしながらかかとの上げ下げをする、といった形です。新しく「運動の時間」を作ろうとすると、それだけでハードルが上がってしまいますが、すでに1日に何度も行っている行動に運動をひとつ付け足すだけなら、無理なく取り入れやすくなります。
回数もあえて「5回だけ」など少なめに設定するのがポイントです。少ない回数であれば「今日は忙しいからいいや」とスキップされにくく、結果として継続率が上がっていきます。
うっかり忘れてしまうときはポストイットで思い出す仕組みを
とはいえ、「くっつける」相手の習慣自体は無意識に行っていることが多いため、最初のうちは運動をくっつけること自体を忘れてしまう方も少なくありません。そんなときは、ポストイットを使って行動を思い出させる工夫が有効です。トイレの扉やドアノブ、洗面台の鏡など、その習慣を行う場所に貼っておくだけで、目に入るたびに思い出すきっかけになります。
実際に、運動が大の苦手だという受講者様に、生活の中の隙間時間に運動を取り入れるこの方法をお伝えしたことがあります。しばらく続けていただくうちに、運動習慣がついたのはもちろんですが、それ以上に「運動に対する心理的なハードルが下がった」という変化が見られました。話をうかがうと、その方はもともと運動そのものが嫌いだったわけではなく、まとまった時間を取って取り組むことへのハードルの高さが「苦手意識」につながっていただけだった、ということに気づかれたようです。その後は、外を軽くウォーキングするなど、ご自身から運動を取り入れる場面も増えていきました。
3. 停滞期は「失敗」ではなく「順調に進んでいる証拠」

順調に体重が落ちていたのに、ある時期からぱたりと数字が動かなくなる——いわゆる「停滞期」は、多くの方が経験する壁のひとつです。
体重が動かないのはホメオスタシス(恒常性)のしわざ
停滞期に入った受講者様には、「これはダイエットがうまくいっている証拠ですよ」とお伝えするようにしていました。これは、人の体に備わっている「ホメオスタシス(恒常性)」という機能が働いているために起こる、自然な体の反応だからです。
厚生労働省の資料によれば、ホメオスタシス(恒常性維持、厚労省の資料内では「ホメオスターシス」と表記)とは、人の体が外界の環境や内部の変化に対して、体温・循環・血圧・血糖値・呼吸・エネルギー代謝といった、生命維持に必要な生理的機能を常に一定の範囲に保とうとするしくみのことです(出典:厚生労働省「ホメオスターシスについて」PDF、2026年8月24日取得)。体重が急に減ると、体はこれを一種の異常事態と捉え、エネルギーの消費を抑えて体重を一定に保とうとする、と考えられています。これが、順調に減っていた体重が急に動かなくなる理由のひとつと考えられます。
停滞期は気合いでは抜けられない、気長に待つのが正解
ここで大切なのは、停滞期は自分の頑張りが足りないから起きているのではない、という理解です。ホメオスタシスは体に備わった自然な仕組みであるため、気合いや根性でどうにかなるものではありません。焦って食事量をさらに極端に減らしたり、運動量を急に増やしたりすると、かえって体への負担が大きくなってしまうこともあります。
停滞期に入ったら、それまでの取り組みを大きく変えずに、気長に構えて待つことが基本的な考え方になります。
停滞期に入った受講者様に、この「体の自然な反応であり、努力不足のせいではない」という話をお伝えすると、心理的な負担がぐっと軽くなる方が多い印象がありました。数字が動かないことへの多少のストレスは残るものの、停滞期を抜けるまでの期間には個人差がありますが、「気長に待とう」という姿勢に切り替えられ、その後また順調に結果につながっていった、というケースを何度も見てきました。
4. それでもつらいときの「1日だけリセット」ルール
とはいえ、頭では「停滞期は自然な現象」とわかっていても、数字が動かない状態が続くと、気持ちがついていかなくなることもあります。そんなときにおすすめしているのが、「1日だけリセット」というルールです。
やり方はシンプルで、「今日1日だけ」と期限をあらかじめ決めたうえで、好きなものを好きなだけ食べてよいと自分自身に許可を出す、というものです。
ポイントは、「1日だけ」という期限を先に決めておくことです。期限を決めずになんとなく食べてしまうと、そのままずるずると食生活が崩れてしまう不安がありますが、「今日だけ」と区切っておけば、翌日からはまた元のペースに戻ればよいだけなので、罪悪感を引きずらずにリセットできます。
我慢を積み重ねすぎることも、ダイエットが続かなくなる原因のひとつです。ときには自分に「今日だけはいいよ」と許可を出す仕組みを、あらかじめ用意しておくことをおすすめします。
このルールをお伝えすると、「ダイエット中にそんなことをしていいんですか」と驚かれる受講者様がほとんどでした。実際に試していただくと、ずっと食べたかった甘いものや脂っこい食事を食べてストレスが解消されるだけでなく、「思っていたほどおいしく感じなかった」という感想をお聞きすることも少なくありませんでした。薄味で野菜中心の食生活に慣れてきたことで、味覚が少しずつ変わっていたのかもしれません。こうした経験を経て、以前ほど甘いものや脂っこいものを強く欲しなくなり、結果としてストレスの少ないダイエットを続けられるようになった方もいらっしゃいました。
5. 「今日が一番、代謝が高い日」——40代のうちに始める理由
40代の受講者様からよくうかがったのが、「もう代謝が落ちているし、今さら痩せられるのだろうか」という不安の声でした。
加齢とともに筋肉量・基礎代謝は年々下がっていく
たしかに、加齢とともに基礎代謝量は低下していく傾向があります。その主な理由としては、筋肉などの除脂肪量が年齢とともに減っていくことが挙げられます(出典:厚生労働省「加齢とエネルギー代謝」e-ヘルスネットhttps://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-07-002.html、2026年8月24日取得)。
つまり、何もしなければ、筋肉量も基礎代謝も、これから先も少しずつ下がり続けていく可能性が高いということです。裏を返せば、「今日」という日は、これからの人生の中で一番、筋肉量が多く基礎代謝が高い日でもあります。
「今が一番、始めやすいタイミング」という伝え方
こうした事実を踏まえて、指導の中では「基礎代謝という観点では、今が一番始めやすいタイミングかもしれませんよ」とお伝えするようにしていました。年齢を理由に先延ばしにしてしまうと、その分だけ体は少しずつ変化していきます。反対に、「今日から始めれば、今が一番取り組みやすい」と捉え直すことで、行動への後押しになることが多いように感じます。
この考え方をお伝えして特に印象に残っているのは、「どこで、どんな方法で痩せればいいのか」とずっと情報収集を続けて、なかなか一歩を踏み出せずにいた受講者様です。「調べている時間の分だけ、体は変化していってしまいます。今すぐ始めた方が、その分痩せやすいですよ」とお伝えしたところ、すぐに行動に移してくださったことがありました。
6. 「自分のため」だけじゃない、続ける動機のもうひとつの視点

続ける仕組みを整えても、日々のモチベーションが揺らぐことはあります。そんなとき、もうひとつ持っておくとよいのが、「自分のためだけではない」動機です。
お子さんがいらっしゃる受講者様には、「将来、お子さんに身の回りのお世話をしてもらいたくない、迷惑をかけたくないと思うなら、今のうちから丈夫な体を作っておきましょう」とお伝えすることがありました。「自分がきれいになりたいから」という動機だけでは頑張りきれない日でも、「大切な家族のために」という視点が加わることで、もうひと踏ん張りできる方は少なくありません。
もちろん、動機はひとつに絞る必要はありません。「自分のため」と「大切な人のため」、両方の視点を持っておくことで、続ける力の支えが増えていきます。
忙しさから運動がなかなか続かず、サボり癖が出てしまっていた受講者様に、「お子さんが独立された後、ご自身で自由に旅行に行きたいと思ったとき、何歳になっているか想像してみてください」とお伝えしたことがあります。足腰が弱ってしまっていては、せっかく自由な時間ができても行きたい場所に行けません。また、もしものときにお子さんに負担をかけてしまう可能性についてもお話ししたところ、その方の心に響いたようで、運動へのやる気を取り戻してくださいました。
まとめ
続ける力は、生まれ持った「意志の強さ」だけで決まるものではありません。むしろ、行動しやすい「仕組み」をどれだけデザインできているかが、続けられるかどうかを大きく左右します。
- すでにある習慣に運動をひとつ「くっつける」ながら運動術
- 忘れてしまうときのためのポストイット活用
- 停滞期はホメオスタシスによる自然な反応であり、失敗の証拠ではないという正しい理解
- つらいときのための「1日だけリセット」ルール
- 「今が一番痩せやすい」という捉え方
- 「自分のため」だけでなく、大切な人のためという続ける動機の視点
今日ご紹介した工夫は、どれも特別な道具や大きな決意がなくても、今日から試せるものばかりです。まずはひとつだけでもいいので、ご自身の生活に取り入れてみてください。
参考文献
- 厚生労働省「ホメオスターシスについて」(PDF): https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000123635.pdf(取得日:2026年8月24日)
- 厚生労働省「加齢とエネルギー代謝」e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム): https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-07-002.html(取得日:2026年8月24日)
